社長さん!あなた逮捕されますよ!! 11 〜不法就労助長罪について~

今回は不法就労助長罪について書いていきます。

不法就労助長罪は、極めて重い罪であり、「知らなかった」では決して済まされません。

. 不法就労助長罪とは何か?

不法就労助長罪とは、不法就労者(日本で働くことができない外国人)を雇用したり、斡旋したりするなど、不法就労を助長する行為を罰するものです。

ここでいう「不法就労者」は主に以下の3つのケースに該当します。

  1. 不法滞在者:在留期間を過ぎて日本に滞在している外国人(オーバーステイ)。
  2. 資格外活動の違反者:留学生などが、許可されていない場所や時間(週28時間超など)で働いている場合。
  3. 在留資格で認められていない活動をする外国人:例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ人に、単純な現場作業(肉体労働)を専らさせている場合。

. 罰則の重さ:拘禁刑と高額罰金、そして企業名の公表

不法就労助長罪の罰則は極めて重く、企業の存続に関わるレベルです。

三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金

  • 3年以下の拘禁刑:懲役刑(現行法では「拘禁刑」)が科されるということは、社長や役員が逮捕・勾留され、刑事裁判を受ける可能性があるということです。企業の信用は完全に失墜します。
  • 300万円以下の罰金:会社だけでなく、行為者個人にも罰金が科されることがあります(両罰規定)。

 

. 社長が「知らなかった」では許されない理由と法的な根拠

不法就労助長罪は、雇用主が「不法就労であることを知っていた(故意)」場合に成立しますが、入管法は例外的に「過失(うっかりミス)」であっても罰する可能性を示しています。

🛡️ 法定の「在留カード確認義務」

あなたが「過失がなかった」と証明するためには、まず法律で定められた確認義務を果たしていなければなりません。

義務の根拠 規定される内容 罰則の根拠 罰則の内容
入管法 73条の2 2 外国人を雇用する者は、法務省令で定める方法により、その外国人の在留資格等について確認しなければならない。 入管法 76条の2 2 20万円以下の罰金

【具体的な確認方法】 法務省令(入管法施行規則 第6条の2)により、事業主は在留カードの提示を受け、在留資格、期間、満了日などの事項を直接確認することが義務付けられています。

つまり、在留カードの「原本」を確認し、在留期間、就労制限の有無などを確認しなかった時点で、あなたは法的な「過失」を問われるリスクが生じ、20万円以下の罰金、さらには不法就労助長罪の重罰へつながる可能性があります。

. 危険なケース:「資格外活動」と「活動の不一致」

特に企業が摘発されるリスクが高い、具体的なケースを再確認します。

(1) 資格外活動のオーバーワーク(留学生など)

留学生に、資格外活動許可の週28時間以内を超えて働かせた場合、会社は時間超過分について「不法就労を助長した」と見なされます。シフト管理の甘さが、刑事事件につながります。

(2) 在留資格と仕事内容の不一致(技人国など)

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人に、専門的な業務ではなく、単純労働を専ら行わせた場合です。これは、「在留資格で認められていない活動」をさせたとして、不法就労助長罪が成立します。

「経営・管理」の在留資格が2025年10月16日より厳しくなりましたが、最近のニュース等の情報をみていると、次に厳しくなるのは「技術・人文知識・国際業務」かなと個人的には思います。

特に、いわゆる現業で働いている「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人対する規制・取り締まりが厳しくなるのではないかと思います。

 

逮捕リスクから逃れるための最終防衛策

  • 防衛策 「在留カードの3点セット」の常時チェックをシステム化する。
    • 期限、資格(業務内容との一致)、裏面(資格外活動許可と制限時間)
  • 防衛策 業務内容の厳格な分離:技人国社員には専門業務以外の単純労働を絶対にさせない。
  • 防衛策 教育と記録:人事・現場責任者全員にリスクを教育し、業務日誌などで実際の業務内容を記録し、入管からの調査に備える。

条文では「過失」があるときに成立すると書いてあります。逆にいえば「過失」がないことを主張すれば成立しないと思われるかもしれません。

しかし「過失」がないことを認めてもらうことはかなり難しいです。

ですので、少なくとも

4. 危険なケース:「資格外活動」と「活動の不一致」

であげた事例は避けてください。

🔚 まとめと次のステップ

  • 不法就労助長罪は、きわめて重い罰である
  • 法令を遵守し、外国人を真のパートナーとして迎える「覚悟」を持つことが必須。

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