社長さん!!あなた逮捕されますよ!!~55~ 依然として繰り返される「最大の勘違い」。日本人との賃金格差が招く、受入れ資格の剥奪。

 以前、建設分野に特化した回(Vol.50)でも詳述しましたが、特定技能制度の運用において、経営者が最も頻繁に、そして最も致命的な判断ミスを犯すのが

「報酬額の設定」

です。

「外国人なのだから、まずは最低賃金からスタートさせるのが妥当だ」

「日本人と同じ給料を払うのは、現場のバランスを欠く」

 こうした経営者独自の「相場観」や「感情論」は、入管法および運用要領の前では、制度の根幹を否定する重大な不正行為とみなされます。

1. 「同等報酬」という言葉の真意を履き違えていないか

 多くの経営者が

「最低賃金さえクリアしていれば、法的な問題はない」

と誤解していますが、特定技能における報酬基準の起点は最低賃金ではありません。

比較対象は、あくまで「貴社で同じ業務に従事する日本人労働者」です。

 ここで特に重大なのが、技能実習2号または3号を良好に修了して特定技能へ移行した外国人の扱いです。

 彼らはその道で3年から5年の経験を積んだ「経験者」です。これを社内の日本人新卒者や、ましてや未経験のアルバイトと同列に扱うことは、合理的な理由のない不当な格差と判定されます。

 入管の審査では、対象の外国人と技能レベルや職務内容が近い日本人の賃金台帳が比較されます。

2. 「手当」の除外と「過当な控除」に潜む脱法性

 基本給の額面を形式的に日本人と合わせたとしても、実質的な手取り額で差をつける姑息な手法は、より悪質な違反として扱われます。

 まず、各種手当の適用です。日本人従業員に支給されている住宅手当、家族手当、皆勤手当、あるいは役職手当。

 これらを

「外国人だから」「寮に入っているから」

といった理由で支給対象から外すことは、明白な差別的取扱いです。

 さらに注意すべきは、給与からの控除項目です。

 社宅として提供している物件の家賃や光熱費を、外国人からのみ市場価格を上回る金額で徴収し、実質的な人件費の回収(利益の上乗せ)を行っているケースが散見されます。

 こうした「隠れ家賃」による利益供受は、報酬の不適切支払いに直結します。

 入管および労働基準監督署は、貴社の就業規則、賃金規定、そして日本人全員分の振込実績を詳細に照合します。「外国人枠」という独自の給与体系が存在する時点で、摘発は時間の問題です。

3. 「5年間の追放」という、経営への壊滅的な打撃

 賃金差別は、特定技能制度において最も厳格に処分される対象の一つです。

 不当なコストカットによって得られるわずかな利益と引き換えに、貴社が支払う代償はあまりに重いものです。

 こうした賃金に関する不正が発覚し、是正勧告に従わない、あるいは組織的な隠蔽が認められた場合、貴社は「不正又は著しく不当な行為」を行ったものとして、特定技能所属機関の欠格事由に該当します。

 その結果、下されるのは

「以後5年間にわたる特定技能外国人の新規受入れ停止」

という行政処分です。現在雇用している外国人の在留更新も認められなくなる可能性が高く、数年かけて築き上げた外国人労働力のラインが、一瞬にして崩壊することになります。


■ 本日のまとめ:賃金設定の検品ポイント

  • 「経験者」としての正当な格付け: 技能実習等からの移行組を、その実務年数に見合った「中堅層」として賃金設定していますか。

  • 日本人従業員との完全な平斉化: 社内の同等技能を持つ日本人との間に、手当を含めた総額で不合理な格差も存在してないですか。

  • 福利厚生における差別的取扱いの排除: 日本人にのみ適用されている手当や福利厚生を、外国人にも等しく提供していることを書類で証明できますか。

  • 控除額の透明性と合理性: 寮費や光熱費の徴収額が実費に基づき、かつ本人の合意を得た適正な範囲内(利益を含まない額)に収まっていますか。

  • 「外国人=低コスト」という意識の完全払拭: この古い経営感覚を持ち続けることが、入管法第73条の2(不法就労助長)や欠格事由への該当、そして「5年間の経営権制限」という最悪の結末を招くリスクを再認識してください!!