永住権の取消しガイドライン公表|税金・社会保険料の滞納はどう判断されるか(2027年4月施行)
2026年10月、出入国在留管理庁が「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を公表しました。
2024年の入管法改正で、永住者の在留資格を取り消すことができる場合が追加されています。税金や社会保険料を故意に払わない場合などです。この改正部分は2027年4月1日に施行され、ガイドラインも同じ日から運用されます。
ガイドラインは、どのような場合が取消しの対象になり得るのか、取り消すのか別の在留資格に変更するのかをどう判断するのか、その考え方と想定事例を示したものです。本記事では、その内容を整理します。
追加された3つの取消事由
改正で追加された取消事由は次の3つです(入管法第22条の4第1項第8号・第9号)。
- 入管法に規定する義務を守らないこと(在留カードに関する義務など)
- 故意に公租公課(税金・社会保険料など)を支払わないこと
- 特定の罪により拘禁刑に処せられたこと
ただし、これらに当たる場合でも、すぐに在留資格を取り消して出国させるわけではありません。引き続き日本に在留させることが適当でないと認められる場合を除き、法務大臣の職権で別の在留資格に変更されます。ガイドラインでは、ほとんどの場合「定住者」への変更を想定しています。
「公租公課」に含まれるもの・含まれないもの
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 公租(税金) | 所得税、住民税、法人税、固定資産税 など |
| 公課(税金以外の公的負担) | 国民健康保険・健康保険の保険料、国民年金・厚生年金保険の保険料 など |
| 含まれないもの | 手数料・利用料(例:富士山の登下山道の使用料)、罰金・過料(例:交通違反の罰金・反則金) |
「公租公課の支払をしないこと」には、実際に滞納している場合だけでなく、申告が必要なことが明らかなのに申告せず、本来払うべき税金等を払っていない場合も含まれます。
「故意に」払わないとはどういう場合か
支払義務があると分かっていながら、あえて払わない場合をいいます。未納の事実があるだけでなく、払わないことが悪質といえる場合に限る趣旨とされています。
判断にあたっては、収入や財産の状況、滞納の回数・金額・期間、支払状況、滞納に至った経緯、その後の事業や生活の状況、本人の言動などを総合的に見て、支払う意思がないことが明白かどうかを判断します。滞納額などについて一律の基準を設けるものではないとされています。
ガイドラインに示されている想定事例は次のとおりです。
| 区分 | 想定される事例 |
|---|---|
| 該当すると想定 | 滞納が長期間に及び、自治体への届出なく転居するなどして所在が分からなくなっている |
| 繰り返しの催告や滞納処分を受けても、納付する意思を示さない(督促・催告を受けても支払いの相談をしない など) | |
| 分納や猶予を受けているのに、約束の期限までに納付しないことを繰り返す | |
| 脱税等により有罪判決を受けた | |
| 滞納処分を免れる目的で、財産を隠すなど徴収を妨げる行為をした | |
| 法人の代表など経営・意思決定に実質的な影響力を持つ永住者が、上記のいずれかに当たる | |
| 該当しないと想定 | 病気、災害、失業などやむを得ない事情で払えない(事業不振、感染症や災害による収入の変動、DV被害による生活困難、ハラスメントを原因とする離職 など) |
| 催告に応じて支払う意思を示し、分納や猶予の措置を受けている | |
| 生活保護に準じた措置を受けている | |
| 給与から天引きされているのに、勤務先の会社が納めていない |
なお、永住許可を受けた後、改正法の施行前に故意に払っていなかったことが施行後に判明した場合も、取消事由に当たることになります。ただし、施行前のある時点の事情だけで直ちに取り消すのではなく、その後の支払状況なども含めて判断するとされています。
会社を経営する永住者の場合
永住者本人が納税義務者でなくても、対象になり得ます。法人に課される税金や保険料について、永住者がその支払義務を認識し、法人の経営・管理に実質的に関与する立場にありながらあえて払わない場合は、「公租公課の支払をしないこと」に当たり得るとされています。
一方、従業員である永住者の給与から税金や保険料が天引きされているのに、会社がそれを納めていない場合、その永住者本人は該当しないと想定されています。
在留カードに関する義務
入管法上の義務違反として想定されている主な事例は次のとおりです。
- 在留カードの有効期間の更新や、紛失したときの再交付の申請をしない
- 在留カードを携帯しない、提示を求められて拒否する
- 偽造・変造された在留カードや他人名義の在留カードを使おうとして、未遂に終わった
- 不法入国者等を、当局から逃れさせる目的でかくまおうとして、未遂に終わった
過失による違反でも取消事由には当たります。ただし、更新を忘れた、うっかり携帯しなかったといった一度の違反だけで在留資格を取り消すことは想定していないとされています。病気や災害など正当な理由がある場合は除かれます。
特定の罪で拘禁刑に処せられた場合
対象となる罪は、窃盗、詐欺、恐喝、傷害、殺人、住居侵入、文書偽造、危険運転致死傷など、法律に列挙された一定の罪に限られ、いずれも故意犯です。刑期の長さは問わず、執行猶予がついた場合も含まれます。
これらの罪で拘禁刑に処せられた永住者は、執行猶予がついた初犯であっても、「永住者」から別の在留資格への変更が想定されています。永住許可後に拘禁刑の前科(対象の罪に限りません)があり、さらに対象の罪で拘禁刑に処せられた場合は、取消しが想定されています。拘禁刑には、刑法改正前の懲役・禁錮も含まれます。
取り消されるのはどのような場合か
取消事由に当たる場合、取り消すか別の在留資格に変更するかは、引き続き日本に在留させることが適当でないかどうかで判断されます。取消事由に当たるに至った経緯に加え、それまでの在留状況や今後の在留意向なども考慮されます。
| 取消事由 | 取消しが想定される場合 |
|---|---|
| 入管法上の義務違反 | 繰り返し指導を受けても在留カードの携帯・提示や更新をせず、今後も守る意思がないと認められる場合。偽造在留カードを使おうとした場合、不法入国者等の逃走を助けようとした場合 |
| 公租公課の不払い | 今後も払う意思がないことが本人の言動等から明らかな場合。複数の公租公課の滞納を繰り返し、今後も支払いが見込めない場合。脱税等で有罪となった場合 |
| 特定の刑罰法令違反 | 犯罪傾向が進んでいると認められる場合(永住許可後に拘禁刑の前科があり、さらに対象の罪で拘禁刑に処せられた場合など) |
別の在留資格に変更された後は、その在留資格の更新手続などで、義務の遵守状況や税金等の支払状況が引き続き確認されます。変更後に要件を満たせば、再び永住許可を受けることもできるとされています。
また、取消し相当と判断された場合でも、家族関係や人道上の配慮が特に必要なときは、取り消さずに在留資格の変更とすることもあり得るとされています。
役所から入管への通報
改正法では、国や地方公共団体の職員が、職務の中で取消事由に当たると思われる外国人を知ったときは、入管に通報できる規定も設けられました。通報は義務ではなく、職員が任意に判断します。
ガイドラインでは、税金や保険料の徴収で度重なる催告や差押えなどを行う中で把握した事実から、支払う意思がないことが明白な場合に当たる可能性があると考えられたときに、通報できるという例が示されています。
通報があったことだけで取消事由に当たると判断されるわけではありません。入管による調査や本人からの意見聴取を経て判断されます。
まとめ:3つの取消事由の早見表
| 取消事由 | 当たる場合 | 除かれる場合・補足 | 取消しが想定される場合 |
|---|---|---|---|
| 入管法上の義務違反 | 在留カードの更新・再交付の申請をしない/携帯しない・提示を拒否する/偽造カードの使用や不法入国者等の蔵匿が未遂に終わった | 病気や災害など正当な理由がある場合は除く。更新の失念や不携帯の一度だけで取り消すことは想定していない | 繰り返し指導されても守らず、今後も守る意思がないと認められる場合/偽造カードを使おうとした、不法入国者等の逃走を助けようとした場合 |
| 公租公課の不払い | 支払義務を分かっていながらあえて払わず、支払う意思がないことが明白な場合(長期滞納で所在不明、催告を受けても相談しない、分納の約束を繰り返し守らない、脱税等で有罪、財産隠し など) | 病気・災害・失業などやむを得ない事情/催告に応じて分納・猶予を受けている/生活保護に準じた措置/給与天引き分を会社が納めていない | 今後も払う意思がないことが明らかな場合/複数の滞納を繰り返し支払いが見込めない場合/脱税等で有罪となった場合 |
| 特定の罪による拘禁刑 | 窃盗、詐欺、傷害、住居侵入、危険運転致死傷など、列挙された故意犯で拘禁刑に処せられた場合(執行猶予を含む) | 刑期の長さは問わない。執行猶予付きの初犯でも、別の在留資格への変更が想定される | 永住許可後に拘禁刑の前科があり、さらに対象の罪で拘禁刑に処せられた場合など |
いずれも、取消事由に当たってすぐに出国となるわけではなく、多くは「定住者」への変更が想定されています。施行は2027年4月1日で、施行前の未納についても、その後の支払状況を含めて判断されます。
参考記事:永住許可ガイドライン改定(2026年10月)|世帯年収・年金・日本語B1などの審査項目と、在留期間「3年」の扱い
出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」「永住者の在留資格の取消しに関するガイドラインについて」
「うちは大丈夫だろうか」と少しでも思ったら
外国人雇用のルールは、知らないまま進めてしまうと、あとから取り返しがつかなくなることがあります。逆に、気づいた時点で動けば、打てる手はまだ残っています。
まずは一言だけ送ってください。「相談したい」だけで大丈夫です。何が問題なのか分からない、という状態でも構いません。羽生(はぶ)が直接お返事します。
ご相談だけで終わっても、費用は一切かかりません。
LINEを使っていない方・状況を詳しく書きたい方は お問い合わせフォーム からどうぞ(24時間受付・はぶが直接返信します)。
立入調査などお急ぎの場合は 03-6326-6602(平日10〜18時)へ。
ご依頼いただく場合の費用(ご相談だけなら不要です)
| ステップ | 内容 | 費用(税込) |
|---|---|---|
| 1. コンプライアンス診断 | 現状のリスクを調査し、改善点を特定 | 33,000円 |
| 2. 適正化・書類作成 | 適正な書類と管理体制を再構築 | 66,000円 |
| 3. 申請・管理代行 | 入管対応からその後の更新まで並走 | 33,000円 |
