在留資格「経営・管理」の許可基準が改正され、多くの方が関心おありなのが「資本金3,000万円」という要件かと思います。
そこで今回は資本金について書いていきます。
この基準は、公表された資料のを見る印象から、事業の安定性・継続性をより厳格に評価する目的で導入されたものと思います。
今回は、この基準において、特に入管法上の特例的な扱いが認められた新株予約権の取り扱いについて、会社法の定義との違いも踏まえて実務的な注意点を交えて解説します。
1,事業規模の評価:資本金3,000万円要件とは(上陸基準の改正)
資本金3,000万円と「同等規模」の評価の法的根拠法務省の公表によると、改正後の「経営・管理」ビザの許可基準では、事業の規模について、以下のいずれかの要件を満たすことが求められます(※1)。
ロ 申請に係る事業が、①資本金等の額が3,000万円以上であること、又は②常勤の職員の数が1人以上であること。
ハ 事業規模がロに準ずるものとして、経営に関する専門的な知識を有する者(中小企業診断士等)の評価を受けた文書を提出すること。
3,000万円が意味するものこの基準は、事業の初期投資や運転資金が十分に確保されているか、という安定性の指標として設定されました。
今後、新規申請や更新審査(猶予期間後)においては、この規模に達しているか、またはハの規定に基づき専門家の評価によって「同等規模」と認められるだけの具体的な事業計画と資金力を証明する準備が必要です。
2,新株予約権の取り扱いと会社法との違い入管法上の特例
行使前の新株予約権が資本金に算入できる理由と具体的な条件今回の改正における新株予約権の取り扱いは、会社法上の定義とは異なる、入管法独自の特例として認識する必要があります。
会社法では、新株予約権は権利が行使され、株式が発行され、資本金に組み入れられるまでは、原則として会社の資本金や資本準備金に算入されません。
それに対し出入国在留管理庁は、現代のスタートアップの資金調達方法に対応し、以下の特例を設けました。申請者が取得した新株予約権の総額は、その権利が行使されていない場合であっても、
「許可基準上の「資本金等の額」に算入できるものとします」(※2)。
としております。
ただ特例の適用条件(重要)この入管法上の特例を適用するためには、以下の具体的な条件をすべて満たす必要があります(※2)。
・有償型の新株予約権であること払込金が返済義務のない資金であること将来、全額を資本金として計上すること
J-KISS型新株予約権の評価についてスタートアップの資金調達手段であるJ-KISSによって調達された資金(払込金額)も、上記の入管法上の特例の条件を満たすことで、資本金等の額として算入することが可能です。
3,今後の実務対応:専門家への確認と留意点専門家による公正評価の必要性。
新株予約権算入の際の留意点新株予約権の額を資本金等の額に算入する場合、その公正性と合理性を証明することが重要です。公正な対価の証明(入管庁の運用基準)
出入国在留管理庁のガイドラインでは、新株予約権の発行が公正かつ合理的な対価に基づき行われたものであることを証明することが必須の審査要件とされています。
この証明要件を満たすには、算入額の信頼性を確保するため、公認会計士等の専門家による評価を受けた文書の提出が実務上強く求められます。
この文書は、法令の条文で一律に義務付けられているものではありませんが、審査通過のために不可欠な証明手段です。専門家による確認義務(上陸基準省令に基づく規定)新規の在留資格決定時において、事業計画書について経営に関する専門的な知識を有する者の確認が義務付けられています(※1の省令ハ)。
新株予約権の額を資本金等の額に算入する場合、この専門家による評価文書の提出は、算入額の信頼性を示す上でも必須の要素となります。
今回は資本金について書いていきました。
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補足情報記号出典
※1出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令 [改正後]
※2出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」等ガイドライン
