外国人雇用・在留資格(特定技能/技能実習/就労ビザ)の入管業務に特化した行政書士・羽生が、実際の相談現場で見てきたことをもとに、正直に解説します。

前回は、「外国人は安い労働力」という認識がいかに古くて間違っているかをお伝えしました。今回からは数回にわたって、実際のコストを制度別に正直にお話ししていきます。

▷関連記事:外国人は本当に安い労働力なのか?(Vol.1)

1回目は「育成就労」です。2027年4月に技能実習制度に代わってスタートする新制度で、これから外国人雇用を考える会社の多くが、この制度を使うことになります。

結論から言います。育成就労は、雇う前から、思っているよりずっとお金がかかります。

【この記事の重要ポイント】

育成就労ってそもそも何?──技能実習との違いをまず押さえる

育成就労は、従来の技能実習制度を「発展的に解消」して生まれる新制度です。3年間の就労を通じて技能を身につけ、その後は「特定技能1号(5年)」→「特定技能2号(無期限)」へとキャリアアップできる仕組みになっています。

技能実習と大きく違うのは、一定の条件を満たせば本人の意思で転籍(転職)ができる点です。これはコストを考えるうえでも重要なので、後ほど改めて触れます。

そして、もうひとつ押さえておきたいのが「タダで人が来るわけではない」という当たり前の事実です。育成就労は、技能実習以上に制度として整備が進む分、受け入れる側の手続きと費用も明確に発生します。

採用前から発生する初期コストの内訳

「人手が足りないから外国人を採ろう」と動き出した社長さんが、最初につまずくのがここです。採用前から、次のような費用が積み上がっていきます。

① 監理支援機関への費用(初期)

育成就労では、監理支援機関が送出機関との連絡調整・人材選抜・事前研修・日本語講習の手配などを一括して担います。これらに関わる初期費用が発生します。

さらに育成就労では、就労を始める段階で日本語能力A1相当(おおむねN5程度)の確認、またはそれに相当する講習の受講が想定されています。この講習にかかる費用も、監理支援機関を通じて発生するコストに含まれてきます。

ここで正直にお伝えしておきます。育成就労は2027年4月施行予定のため、監理支援機関の具体的な手数料は、現時点ではまだ確定していません。参考として、旧制度である技能実習の監理団体では、初期費用だけで1名あたり数十万円規模(おおよそ50万〜90万円程度)かかるケースが一般的でした。育成就労でも同程度の費用感を想定しておくほうが無難です。正確な金額は、必ず監理支援機関に直接確認してください。

② 渡航・入国にかかる費用

航空券、ビザ申請費用、入国時の移動費などです。当然ですが、複数名を採用すれば、その人数分だけ積み上がります。

③ 育成就労計画の認定申請費用

育成就労では、「外国人育成就労機構」に対して育成計画を申請し、認定を受ける必要があります。この手続きにかかる費用です。専門家に依頼する場合は、その報酬も発生します。

④ 住居の準備費用

外国人労働者の住居を会社が用意するケースは少なくありません。敷金・礼金・家具家電の購入など、これも初期費用としてまとまった出費になります。

現場で一番多いのは「監理費用」と「総額」の見誤り

ここからが、面談でいちばんよく見る話です。

社長さんがコストを見誤るポイントは、だいたい決まっています。一番多いのは、監理支援機関に支払う費用を軽く見ているケースです。「人を紹介してもらうだけでしょ?」というイメージのまま進めてしまい、実際の請求を見て驚く、という流れです。

そして、もっと根本的なのがこちらです。個別の費目うんぬん以前に、「全体的に、ここまでお金がかかるとは思っていなかった」とおっしゃる社長さんが、本当に多い。監理費用、渡航費、申請費、住居費……一つひとつは「まあそうだよね」という金額でも、合計すると最初のイメージとはまるで違う総額になります。

原因はシンプルで、最初に案内された金額=総額だと思い込んでしまうからです。実際には、そこに乗ってこない費用が後から積み上がります。

正しい順番はこうです。動き出す前に「採用にかかる総額」を費目ごとに洗い出し、自社のケースでいくらになるかを先に確定させる。「いくらか」を先に握ってから、採用するかどうかを判断する。逆にしてはいけません。

育成就労ならではのコスト──転籍リスクへの備え

育成就労には、技能実習にはなかった「本人意向による転籍」が制度として認められています。一定の技能・日本語の試験に合格するなどの条件はありますが、条件を満たせば本人が他社へ移ることができます。

これが何を意味するか。採用・研修にコストをかけて育てた人材が、他社へ転籍してしまうリスクが、制度上存在するということです。

これを防ぐには、給与面だけでなく、住環境・職場環境・キャリアパスの提示など、「この会社で働き続けたい」と思ってもらうための環境整備が必要になります。そして、これもまたコストです。

つまり育成就労は、「採って終わり」ではなく「採ったあとも定着のために投資し続ける」前提で見ておく必要がある、ということです。

それでも採用する価値はあるのか

「じゃあ、やめたほうがいいのか」と思った社長さん。そうは言っていません。

人手不足が深刻な業種では、外国人材なしに現場が回らない状況になっています。大事なのは、正確なコストを把握したうえで、経営判断として採用を決めること。これが唯一の正解です。

逆に、「安いから雇う」という前提で進めると、必ず後悔します。それだけは断言できます。

次回は「特定技能」の初期コストについてお伝えします。育成就労とは構造が異なる部分があるので、混同しないようしっかり整理します。

【まとめ】育成就労の初期コストで覚えておくべきこと

  • 育成就労は「安い労働力」ではない。監理支援機関への費用・渡航費・申請費・住居準備費など、採用前から複数の費用が発生する
  • 現場で一番多いのは「監理費用」と「総額」の見誤り。最初に案内された金額=総額ではない
  • 転籍が認められる制度のため、定着のための環境整備も継続コストとして見ておく
  • 正確なコストを把握したうえで経営判断する。「安いから雇う」で進めると必ず後悔する

 

 

【「うちは大丈夫か?」と思ったら、その直感は当たっています】

外国人雇用のコンプライアンス違反は、「知らなかった」では済まされません。経営者本人が刑事責任を問われる例が、現実に起きています。

でも、この記事を読んでいる時点で、あなたはまだ間に合う側にいます。対応は早いほど、打てる手が残ります。

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